制度と補償

契約書の形式が変わり、報酬の支払い条件が明確になったことで、以前よりもトラブルは減ったものの、新たな課題も浮上しています。特に元請け企業との力関係や税務申告の変更点は、多くの一人親方が頭を悩ませているポイントではないでしょうか。

この記事では、フリーランス新法施行後の現場で実際に起きている変化と、私自身が経験した具体的なトラブル事例、そして今後の対応策について詳しくレポートします。建設業界で生き残るための権利保護の方法や最新の税金対策まで、明日からの仕事に役立つ情報をお届けします。

フリーランス新法（正式名称：特定受託事業者への取引適正化法）の施行により、建設業界で長年活躍してきた一人親方の働き方に大きな変化が訪れています。現場で20年以上の経験を持つ私が直面した現実と、同業者から聞こえてくる声をもとに、法施行後の実態をレポートします。

まず1つ目の現実は「契約書の明確化」です。これまで口頭での取り決めや簡易な注文書だけで仕事を請けることが多かった現場ですが、法施行後は発注者との間で詳細な契約書の取り交わしが必須となりました。ある大手ゼネコンの下請け工事では、従来3ページだった契約書が12ページに膨れ上がり、読解に半日を要するケースも。一方で、これにより「言った・言わない」のトラブルが激減し、作業範囲や納期の認識齟齬がなくなったという利点も生まれています。

2つ目の現実は「報酬の支払い期日厳守」の徹底です。これまで慣例として存在していた「出来高払い」や「工期終了後の支払い」といった曖昧な精算方法が激減。法律で支払期日が明確化されたことで、以前なら3〜4ヶ月かかっていた入金が、現在は最長60日以内に確実に入るようになりました。ある埼玉県の現場では、発注元の経理部門が支払い管理を厳格化し、一人親方への支払いが最優先されるケースも出てきています。

3つ目の現実は「仕事の獲得難易度の二極化」です。フリーランス新法対応を徹底する大手企業は、コンプライアンス強化の一環として、信頼できる一人親方との取引を優先する傾向が強まっています。実績と評判のある一人親方は以前より安定した仕事量を確保できる一方、新規参入者や小規模な現場では、煩雑な契約手続きを避けるため「正社員採用」や「専属下請け化」の圧力が高まっています。神奈川県の戸建て現場では、これまで複数の一人親方に分散していた仕事を、契約管理の手間を省くため1社の法人下請けに集約するケースが増加しています。

今後の対応策としては、まず「契約書テンプレートの準備」が重要です。建設業界向けの標準契約書をカスタマイズして常備し、発注者との交渉をスムーズにすることで仕事獲得の障壁を下げられます。次に「デジタル化への対応」も必須で、電子契約システムの導入や請求書の電子化により事務処理を効率化できます。最後に「ネットワーク構築」が鍵となります。同業の一人親方や関連業種とのつながりを強化し、法改正情報の共有や仕事の融通などで助け合うことで、単独では乗り越えにくい変化に対応できるでしょう。

フリーランス新法は、建設業界の一人親方にとって痛みを伴う変化をもたらしていますが、これを機に契約関係の透明化や報酬の安定化という恩恵も生まれています。変化を前向きに捉え、適切に対応することで、一人親方としての強みを活かした働き方を維持していくことが可能です。

フリーランス新法の施行後、私たち一人親方の生活は大きく変わりました。「契約書の作成が義務化された」「報酬の支払い期日が明確になった」など、表面的には大きな変化があったように見えますが、現場の実態はどうなのでしょうか。

私が所属する建設業界では、法施行後に顕著な収入変化が見られました。まず、元請けからの発注単価が以前より10〜15%ほど上昇。これは契約書に明記される報酬額が「適正な対価」として見直された結果です。ある大手ゼネコンでは、一人親方への支払いを見直し、従来の日当12,000円から14,500円に引き上げました。

しかし、すべてがバラ色というわけではありません。契約書面の作成が義務化されたことで、以前は「口約束」で済んでいた仕事の引き受けが減少。特に緊急の小規模工事などでは、契約書の作成を嫌う発注者から仕事を断られるケースが増えています。

また新たな契約トラブルも発生しています。ある同業者は、契約書に明記された「業務範囲」を超える作業を求められ、追加報酬を請求したところ、発注者から「今後の仕事はない」と言われてしまいました。契約書があるからこそ、その解釈を巡るトラブルが増えているのです。

支払い面では改善が見られます。法律で報酬の支払期日が明確化されたことで、以前は「3ヶ月後払い」が当たり前だった業界でも、60日以内の支払いが標準になりつつあります。これにより、資金繰りが改善した一人親方も少なくありません。

一方で、「フリーランスとして認められない」という新たな問題も発生しています。特定の元請けに長期間依存している一人親方は、「実質的な雇用関係」と見なされるリスクが高まり、契約の見直しを迫られるケースが増加。私の知人も15年間取引のあった企業から「社員になるか、他の取引先も開拓するか」の二択を迫られました。

法施行後、保険や福利厚生の面でも変化が現れています。「フリーランス共済」への加入を促進する元請け企業が増え、労災保険特別加入の条件を整備する動きも出てきました。これは一人親方の安全網強化につながる前向きな変化と言えるでしょう。

フリーランス新法は、一人親方のような個人事業主に明確な保護を与える一方で、新たな課題も生み出しています。現場では「契約書を作成する手間」と「権利の明確化によるメリット」のバランスをどう取るかが、今後の大きな課題となっていくでしょう。

フリーランス新法施行後、建設業界の一人親方を取り巻く環境は大きく変化しています。現場で20年以上働いてきた経験から、実際に何が変わったのか、そして今すぐ押さえるべき権利と税金対策について解説します。

まず注目すべきは「書面契約の義務化」です。これまで口頭での契約が一般的だった建設現場でも、発注者は仕事の内容や報酬、支払期日などを書面で明示する必要があります。ある東京都内の現場では、書面契約がないことを理由に支払いが滞っていた一人親方が、新法を根拠に未払い分を受け取ることができました。

次に「報酬の支払い遅延に対する保護」が強化されています。法定支払期日を超えた場合、遅延損害金が発生するようになりました。大阪の高層マンション建設現場では、元請けからの支払いが2ヶ月遅れた際、一人親方が遅延損害金を含めた請求を行い、満額回収に成功したケースがあります。

税金面では、事業所得として確定申告する際の経費計上がより明確になりました。工具や作業着、移動費、現場での飲食費など、仕事に直接関係する経費は積極的に計上すべきです。国税庁のホームページでは、建設業の一人親方向けの経費計上ガイドラインが公開されているので、確認しておきましょう。

また見落としがちなのが「社会保険料の取り扱い」です。フリーランス新法では、実質的に雇用関係があると判断される場合、発注者側が社会保険料を負担する可能性が高まりました。千葉県の建設現場では、長期継続して同一の元請けから仕事を受けていた一人親方が、実質的な雇用関係を認められ、遡及して社会保険料の半額負担を受けられたケースもあります。

一方で注意点もあります。新法により取引の透明性は高まりましたが、その分「業務委託」と「雇用」の線引きがより厳格になっています。自分の立場を明確にし、適切な契約形態を選ぶことが重要です。北陸地方の公共工事では、これまで一人親方として働いていた職人が、新法施行後に元請け会社から正社員化を打診されるケースが増えています。

最後に実践的な税金対策として、「青色申告特別控除」の活用を強くお勧めします。65万円の控除を受けるためには、複式簿記での記帳と電子申告が必要ですが、専用のアプリを使えば難しくありません。実際に、関西地区の足場職人は青色申告に切り替えたことで、年間20万円以上の税負担減に成功しています。

フリーランス新法は一人親方にとって、権利強化と適正な評価をもたらす大きなチャンスです。正しい知識を身につけ、積極的に活用していきましょう。

埼玉労災一人親方部会　https://www.saitama631.com/