豆知識
一人親方
労災隠しは犯罪!?一人親方が知っておくべきその実態と罰則とは!?
建設業一人親方の労災隠しとは?まずはその実態を徹底検証!
現場での事故や、怪我は全て労災となります。
たとえそれが小さな小さな傷であったとしても、もしそれが紙で切った指の傷であっても、職務中の怪我であれば労災であることは変わりありません。
ただ実務としてその怪我を労災としなかったとしても問題ではありません。建設業の労災隠しとはもっと深いところにあります。
労災隠しとは
仕事での怪我なのに労災保険を使わずに、また使わせないで治療を受けなかったり、受けさせなかったりすることが「労災隠し」と思っている人が多いかもしれませんが、実はまったく違います。
労災保険を使うか、使わないかは被災者本人が決めることが出来ます。
労災が発生すると、労働基準監督署に「労働者死傷病届」という報告書を提出しなくてはならない義務があります。この報告書を故意に提出しないことを「労災隠し」と言います。
一人親方は「労災隠し」の対象外
意外に思われる方もいるかも知れませんが、個人事業主である一人親方は、「労働者」ではありません。したがって「労働者死傷病届」を提出する義務はありません。
ただし、いわゆる偽装一人親方の場合はその限りではありません。実質的に労働者と変わりの無い働き方をしていれば労働者と見做され、「労働者死傷病届」を提出しなければなりません。
一人親方が労災にあっても、特別加入の労災保険に加入していれば、一人親方は自由に自分の保険を使用して治療を受けられます。元請けの同意は不要です。
労災隠しの実態
ここをお読みの方は一人親方の方だと思われますので、以下は一般的な建設業の労災隠し、一人親方の労災保険未加入問題について詳しく書いていきます。
建設業の労災隠しは昔からあります。
  • 治療費が会社持ち
  • 労災は正社員だけ
  • 怪我が軽傷だから労災ではない
などのパターンがあります。
労災隠しで多いのは、「治療費は会社で持つから健康保険で行ってきて。仕事中の怪我じゃなくてプライベートの怪我って言ってね」と会社から言われるパターンです。
これは明らかな労災隠しです。仕事中の怪我はどんな理由があれど労災保険で治療を受けね狩ればいけません。
そして「労災は正社員だけだから、自分で治療してね。」とアルバイトや契約社員だと労災保険に加入していないと言われるケースもあります。これは完全な嘘。労災保険はアルバイトでも契約社員でも確実に加入しなければならず、正社員じゃないからといって労災を使えないことはありません。
そして「軽傷だから労災ではない」と言われることもあるでしょう。これも間違い。どんなに小さな怪我でも労災です。
さらに現場で骨を折るなどの怪我をしても、自分で病院に行き健康保険を利用して、「自転車で転んだ」などと言って治療を受ける人が少なくありませんでした。これは仕事中の怪我だと言えば労災保険を使わざるを得なくなります。
こういった自主的な労災隠しも存在します。
建設現場での労災隠しの原因とは
労災隠しの原因は1つではありません。
元請け側に原因がることもあり、下請けはもちろん一人親方に原因があるケースもあります。代表的なものは
  • 一人親方の労災未加入問題
  • 労災を使うと保険料が上がる
  • 元請会社の風評被害懸念
  • 労基の監査を懸念(現場稼働停止リスク)
この4つ。
元請の圧力の場合もありますし、元請に知られたくないという下請会社としての労災隠し。
そして
一人親方の労災未加入問題
まず1つ目の労災隠しの原因は一人親方の労災未加入問題です。
現在大手の建設現場では一人親方であっても、労災の加入を求められます。加入していなければ現場に入れないケースもある。
ですから一人親方は労災の加入団体に入り、労災保険に特別加入しています。
しかし一人親方の労災加入は任意であり、加入していない一人親方も存在します。
現場の業務中での事故の怪我の治療は労災保険で治療しなければならないのですが、その労災保険に加入していないため。労災であることを隠し、国民健康保険を利用して治療を受けるためにプライベートでの怪我として治療を受けます。
そして現場の責任者に労災未加入が見つかってしまえば、その後現場に入れなくなる可能性もあり、それは一人親方にとって死活問題です。その結果、現場には事故を伝えずに病院に行くことになります。
このため未加入の一人親方は労災隠しの原因になります。
労災を使うと保険料が上がる
2つ目の労災隠しの原因は、労災を使うと保険料が上がることです。
自動車保険を思い出していただければ想像しやすいと思うのですが、労災保険は保険を使うと次年度の保険料があがります。
ただし従業員が20人以下の会社は労災保険をいくら使っても保険料は上がりません。(メリット制という制度のため)
従業員が数十人や数百人いる会社では、保険を使えば最大で30%ほど保険料が上がることになり、会社の財政に負担をかける可能性があります。
建設業では普段から事故や怪我の多い業種であり労災保険を頻繁に使います。ですから今年は労災保険をたくさん使っているという会社では、保険料が上げないために労災を隠し、健康保険の利用を従業員に強いる会社が存在します。
元請会社の風評被害懸念
3つ目が大手建設会社の世間体や風評被害を防ぐために、労災隠しが行われる場合もあります。
建設会社では元請会社が労災事故の責任を持ちます。
元請会社は一人親方にとっては仕事をいただく会社ですが、元請会社も施主から仕事をもらって成り立っています。
ですから「あそこの会社は事故が多いからやめたほうがいい」などと噂が流れてしまうと困るのです。
大手ゼネコンなども事故などの少ない建設会社にお願いしたいものですし、できるだけ労災事故は少ないほうがいいのです。
労災が増えることで事故が多い会社だと思われたくない。その結果、元請からの命令により下請や孫請会社で労災隠しになってしまうのです。
下請はこれからも仕事をもらうためには、仕方がなく従業員に労災隠しを強要することになるのです。
1番の風評被害は労災隠しが明らかになることですが、そこまでは頭が働かないのでしょう。
労基の監査を懸念(現場稼働停止リスク)
最後の労災隠しの原因は、労基の監査です。
大きな長期にわたる現場では事故が多かったり、重大事故が発生すると労働基準監督署(労基)の監査が入ります。
建設現場ではタイトなスケジュールで動いていて、資材の搬入や人の配置もスケジュールを組んで動かします。
1日現場が止まれば、全ての資材や人を後ろにずらさなければなりません。各協力会社もこの現場だけで動いていればいいのですが、他の現場にも入っていることも多く簡単にスケジュールを動かすことはできません。
ですから可能な限り現場は止めたくありません。
労災事故で監査が入れば、この現場を数日止めることになり、様々なスケジュールの変更が伴います。できれば現場が止まることは避けたい。
ですから事故が大きければ大きいほど、元請は労災を隠したくなるものです。
そして労災が起これば現場が止まることを恐れ、自主的に健康保険を使い治療する一人親方も存在しますが。
元請の圧力、もしくは自主的に労災を隠す従業員がいる。
これが労災隠しの1番の原因です。
労災隠しが発覚した場合の罰則とは?
労災事故は全て報告する義務があります。
労働安全衛生規則の第97条に労働者死傷病報告について書かれています。
「(労働者死傷病報告)
第九十七条 事業者は、労働者が労働災害その他就業中又は事業場内若しくはその附属建設物内における
負傷、窒息又は急性中毒により死亡し、又は休業したときは、遅滞なく、様式第二十三号による報告書
を所轄労働基準監督署長に提出しなければならない。
2 前項の場合において、休業の日数が四日に満たないときは、事業者は、同項の規定にかかわらず、一
月から三月まで、四月から六月まで、七月から九月まで及び十月から十二月までの期間における当該事
実について、様式第二十四号による報告書をそれぞれの期間における最後の月の翌月末日までに、所轄
労働基準監督署長に提出しなければならない。」
労働者死傷病報告とは、労災の報告のことです。
このように事業者には労働中や就業中に怪我などの事故が起きた場合に、労働基準監督署に報告する義務があります。
そして労働安全衛生法の第100条でもこの報告に対し、労働基準監督署長が強制できる旨が書いてあります。法律上でも労災隠しは違法だということですね。
罰則は同120条において、書かれており、違反した場合は50万円以下の罰金が課せられます。
罰則については思ったより軽い罰則であったのではないでしょうか?会社として50万円の罰金というのはそこまで重いものではないかもしれません。
ただし労災隠しは社会問題であり、50万円支払うだけで済むものではありません。
建設業界で労災隠しが表沙汰になればこれからの受注に影響が出るでしょう。罰則より社会的な責任のほうが重くのしかかるでしょう。
 
一人親方と元請の責任の所在は?
では実際に労災が起きた時、その労災の責任を負うのは、元請と一人親方のどちらにあるのかという問題です。
原則として労災の責任は元請が持ちます。
これには元請企業と下請企業そして一人親方には雇用関係はないですが、実質的な使用関係があります。元請企業が使用者で一人親方が労働者という関係が成り立っています。
(それを理由に一人親方は労災への特別加入が許可されています)
そして労働契約法第5条では「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働ができるよう、必要な配慮をするものとする。」となっており、これを安全配慮義務と言います。
簡単に言い換えると、元請企業は一人親方が安全に働ける環境を作る義務があるということ。ですから怪我をした場合は元請が責任を持ちなさい。と国が言っています。
労災の責任も労災の加入責任も元請にあるということですね。
ただしこれは原則であり、裁判の判例では元請だけでなく、一次請負などの実質の使用者への責任も認めています。
どちらにしても一人親方に労災の責任はありません。元請が責任をもつことになります。
 
 
労災隠しの予防策として一人親方の労災保険への加入が必須?!
責任は元請にありますが、その代わり労災事故が起きた場合に一人親方が労災に入っていなければ次から仕事を受注できなくなります。
なぜなら労災事故が起きた時、労災保険を使えなければその責任は元請が取ることになり、迷惑をかけてしまうからです。元請に迷惑をかけないためにも労災には加入しましょう。
その他にも一人親方は労災保険に入るメリットがあります。
  • 一人親方は保険料が上がらない
  • 治療費の全額負担と休業補償
の2つのメリットです。
一人親方の場合はどれだけ労災保険を使っても保険料はあがりません。保険料があがるのは労働者が20人以上の事業者のみです。
そして実際に怪我をした場合にも、健康保険と違って治療費は全額保険から出ますので、入院費用などの心配がなくなります。
そして一人親方は仕事を休めばそのまま収入に影響がでますが、労災保険に入っていれば4日以上の休業の場合は休業補償も日額で支払われますので、大怪我で長期間仕事ができなくなっても心配ありません。
このように一人親方は労災保険に加入することがとても大切です。
 
 
建設業一人親方の労災隠しとは?まとめ
建設業一人親方にとって労災隠しは、自分だけの問題ではなく元請との関係においても大切です。元請は国から労災保険の全員加入を迫られており、労災事故においても責任を取るのは元請会社です。
その罰則は50万円以下の罰金ですが、その他にも労災隠しが表沙汰になれば、元請会社の社会的責任は大きくなってしまうでしょう。
元請会社に迷惑をかけないためにも一人親方の労災加入は必須です。
さらに実際に怪我を負った時の補償はとても手厚く、怪我が収入に直結する一人親方にとって労災加入は必須です。
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